「あれ、もうお開きかあ」
「二次会どうしよー、参加する?」
同僚の二次会メンバーを募る声を耳にして、どうしようか軽く思案に暮れた。
最終的には別に予定も無いし、なんて。
参加する方向で自らの意志を伝えようとしたその瞬間だった。
「わ、」
「なになに電話?カレシィ~?」
「違っ、居ないしそんなの!ちょっと待って、出てくる」
「んー、ごゆっくりー」
すっかり酩酊してしまっている同僚の彼女に軽く苦笑を零すことで応酬し、何とか奥まった場所を求めて歩きながら通話ボタンに指を乗せた。
「もしもし――」
"……俺ですけど"
「え!?」
耳に入った声にハッとして振り返ると、此処から少し距離を隔てたところにある男の姿が。
目を丸くして自分の現状を再度確認していると、まるで笑みを噛み殺した声音で続け様に言葉が落とされた。
"いい加減、ちゃんと相手確認してから出る癖つければ?"
「…、……余計なお世話。て言うかタメ口禁止って言ったのに!」
"だってあんまり先輩っぽくないんですもん"
終いには抑え込むことも諦めたのか、声を上げて笑いだす始末で。
そんな男の声音に少しだけ周りが反応したことが窺えて、意味も無く赤面した私は咄嗟に顔を逸らす。
"無視しないでよ"
「――…っ、敬語!」
"こっち向いてくださいよ、先輩"
後々考えてみると成る程可笑しな光景で、直接話せば良いのに近距離で電話する私たち。
しかしながらこの時は後輩の男に好い様に扱われて癪だと感じていた訳で。
「……なんでしょう」
むっと眉根を寄せながら振り返ったりする辺り、私も相当酔っていたに違いない。
"二次会"
「え?」
"行くの、やめなよ"
だっから!
再度その言い回しを咎めようと口を開き掛けた、その瞬間だった。
"二人でどっか行きませんか"
「――…なに言って、」
"俺の告白、"
それは――、
"聞いてくれません?"
少し気になっていた年下の、少し生意気な後輩との新しい始まり。
忘年会と後輩くん
生意気な年下くんに限って、仕事は出来る子だったりする